ショートショート等掲載の個人サイトをリニューアルしました
2019年 09月 23日
小説に「ショートショート」という分野があり、日本では星新一さんによって広められたと言われています。私も若いころは星さんの『ようこそ地球さん』や『おみそれ社会』『ほら男爵 現代の冒険』といった短編集を読んでおりました。一編が短いので読みやすく、また落ちのある話なので読後に「収束感」があって、なんとなく好感を持っていたのを記憶しています。
ものの資料によると『ようこそ地球さん』は1961年に新潮社から出されているようで、『おみそれ社会』『ほら男爵 現代の冒険』は1970年にそれぞれ講談社、新潮社から出されているとか。もう50~60年も前の出版なんですね。
私が読み出したのは、出版よりずっと後ですが、これらのショートショートを読むうちに「短いお話だから、もしかしたら書けるかも」とシャラ臭いことを考えるようになりました。まあ当時、勤務していた編集系の会社で、発行紙の空きスペースに短いコラムなどを書いていたので、シャラ臭い思いが伸張していたのかもしれません。
そんな折り、知り合いからショートショートを書いてみないかとの依頼を受けました。某機関誌に掲載するもので、文字量は原稿用紙3枚くらいとのこと。当時私はまだ会社員でしたが、その出稿が、たまのこと(当時は年に2~4回程度でした)なので時間的には大丈夫かなと思い、お話を受けたのでした。
最初のお話が掲載されたのが、1988年の春号。機関誌第4号でした。それからしばらくして発行が隔月になり、以後、2016年までの29年間、書かせてもらいました。途中で2回、病気で入院したため非掲載の号がありましたが、4号から155号まで、全150話を書いたことになります。
短いお話ですので、掲載スペースも限られています。当初から「1ページに納める」ことが義務づけられており、初回掲載から数号後には、文字数まである程度決まってきました。もちろんレイアウトをする方が、文字量の多少に合わせて組み方を調整してくださるのですが、だんだんレイアウトが一定になっていき、文字量もほぼ一定という流れになっていきました。
グラフィックデザインの世界では「コピーの箱組み」というものがあります。これはコピー(広告やパンフレットなどの文章」をきっちり四角くまとめるものです。コピーのうちでも、いわゆるヘッドコピー(タイトル)ではなく、ボディーと呼ばれる「本文」によく求められた形です。デザイナーさんが作った枠組みの中に、きっちりと文字を並べます。1行目の1文字目から、最後の行の右端まで(横組みの場合)、きれいに文字を詰め込む形です。
これには賛否両論あって(私は嫌いですが・笑)、箱組みの方が見た目のバランスが良いという派と、そんなこと気にする方がおかしいという派と、結構、言い合いになったりしたものですが、実際のところ、箱組みの依頼を受けてしまったら、ちゃんと収まるように文章を作らざるを得ません。これ、無駄なことをしているんですが、でもね、文章作成の訓練という意味で考えると、なかなか良い練習になったのです。
箱組みするということは、文字数がきっちり、ぴったりでなければなりません。約物(句読点とかカッコとか)は半角と見るという向きもありましたが、約物の詰めを考えなければ、漢字も平仮名も記号(約物)もすべて一つを一文字として文字数を数えていくわけです。アルファベットは英語として扱うと半角になりますし、数字も横書きの場合、半角が前提でした(新聞社では英字も数字も全角を使います。縦書きが前提だからでしょう)。そのあたりはデザインとのコンセンサスを取る必要がありましたが、いずれにせよ、決まった文字量にぴったり合わせることが求められるのです。
当然ながら、初めからぴったりで書けるはずがありません。また文字量よりも内容の方が大切ですから、まずは示さなければならない内容をきっちり入れた文章を書きます。でもそれじゃあ、文字量が合わないのです。だいたいの場合、字数が多すぎます。場合によっては規定の倍以上になることもありました。
これを規定文字数にまで切り詰めていかなければならないのです。当初は「なんでこんな無駄なことをしなくちゃいけないんだ」と腹を立てたこともありましたが、規定量にぴったりの文字量にまで削減できると、妙な高揚感と満足感があるわけで、なかなか面白いものでした。また最初に書いた文章は、当初は「これでいい」と思っていても、短くしなければならないという思いで読み直すと、無駄な表現やダブりなどが見えてくるのです。それらを削ぎ落とし、また言い回しを変えるなどもしながら文章のダイエットを進めるうちに、文章自体の精度が上がっていきます。単に短くするだけでなく、短くするために無駄を省き、言い回しを工夫することで、より良い文章になっていくわけです。
ただ、短くするには単に無駄の削除や言い回しの変更だけで済まない場合が多々あります。文章ごとごっそり割愛しなければならない場合も少なくありません。そこで、最終的に絶対に残さなければならない内容のために、その他を削除していきます。自分としては残しておきたい内容があっても、それがあるために文章が少なくならないのなら、ばっさりと切るしかないのです。
当初この「ばっさりと切る」ことがなかなかできませんでした。「この部分を切ってしまうと、味や深みがなくなって無味乾燥な文章になっちゃうじゃないかあ!」とか、一人でMacの前で叫んだものでした(笑)。でもね、その削除を敢えてやると、次の展開が見えてくるわけです。その部分を削除しても、味や深みを少しでも残すことはできないかと考える。すると別の表現を思いつくこともあるわけです。
こうしてたった数百文字のコピーに数日掛けて、悶々としながら完成に向けてキーボードを叩き続けるわけで、これ、結構、勉強になりました(今ここに書いている文章は、無駄が多い気もしますが・笑)。
話を戻して。
依頼を受けたショートショートの文字量が一定になったことにより、こちらも、箱組みのような感覚で、毎度毎度、内容を削ぎ落としていきました。1200文字程度の規定ですが、いつも倍以上を、つい書いてしまい、半分にするという作業を繰り返していました。
(昔の資料を見ると、依頼の文章行数が、12文字×123行(1476文字)、19文字×100行(1900文字)、17文字×80行(1360文字)、16文字×80行(1280文字)と、初めのうちは文字数が上下し、その後、少なくなっています。途中で掲載誌の体裁が変わり、小さな判になったことが、文字数減少の大きな理由だと思われます)
ということで、文字量に配慮することで、結果的に文章が精査されていったと思います。とはいえ完成版の質が高いかといえば、内容的には面白かったりつまらなかったりするわけで、それはまあ私の力量の問題ですが、文章を短くすることで、初めに書いた粗稿をより良くすることができたのは、昔の「箱組み」作業が、若干なりとも役に立っているのかなあと思ったりしています。
こうして書き続けたショートショートは、依頼主の許可を得て、私の個人サイトに掲載してきました。掲載誌にも、バックナンバーがある場所として私のサイトURLを載せていただいていました。
そのサイトは、1998年にオープンし、その後、若干のデザイン変更はしましたが、使っていた(借りていた)サーバーの自由度が低く、CGI系がいっさい使えなかったので、サイト自体にあまり手を加えず、内容(お話)の追加のみを続けていました。
しかしさすがにそれでは最近の流れに抗いすぎだろうということで、このたび新たなレンタルサーバーを用意して移行。新たなデザインを作り、それをCMSに取り入れたサイトへとリニューアルしました。
よろしければこちらのサイトへもお寄りくださいませ。
なお同サイトには、上記ショートショート(ショートショット!)以外に、私の書いたショートストーリーやコラム、戯れ言なども掲載されています。古い内容が多く、内容的にもお目汚しになるかと思いますが、よろしければどうぞ。
『読みもののページ』https://reading-p.com/